映画 黄金を抱いて翔べ ネタバレ感想 

  • 2012.11.04 Sunday
  • 22:53

 ワールドプレミアに続き、一般公開後黄金を再度見てきました。

今回は純粋に作品に没入できました。

以下ネタバレですので読みたくない方はスルーしてくださいね。

 ともかく素晴らしい作品に仕上がっています。
多分高村作品の映像化で一番の成功作と言えるのではないでしょうか。
なにせ原作20年読んだ私ですら、単純にどきどきするし、スピード感もあるし。泣けるシーンももちろん。
あのけだるくて泥臭い雰囲気がひしひしと伝わってくる。
ここは井筒監督につくっていただいて本当によかった〜という正直な気持ち。
監督は、この作品のなんと、ハードでもなく文庫でもなく、雑誌掲載分のものを読んでおられるようで(驚)。
たぶん一番ハードな感じの分を念頭に置かれたのかなと思います。

筋は、おおむね原作と同じ。大きく異なっていることのひとつ目のは、舞台が現代ということ。
携帯電話もパソコンも出てきますよ〜。
しかし、雰囲気は、まったく20年前の原作と同じように感じました。
それから二つ目は、幸田と北川がモモのために殺しをしないこと。
原作では、モモの兄殺しを見たと思われる国島を、幸田と北川がモモに黙って殺すわけですが。
この男の存在自体が抹消されています。
ですので、この国島の彼女のミエちゃん、ミエちゃんと野田のからみ、はすべてカット。野田がミエちゃんとからむシーン、みたかったなあ。残念。
で、原作では、幸田に兄殺しを告白したモモが、自分のために殺しをしてしまった幸田に、あんたとはいつか神の話をしたいというシーンが重要場面としてあるわけですが、当然これもない、と。
正直、この殺しがないと、モモと幸田の深いつながりや、どうしてモモが幸田にのめりこむのか、その説得力が薄いな、と思ったのですが、でもちゃんと話はつながってました。(これを映像にしてしまうと、泥棒集団が、人殺し集団になってしまうと思ったのかしらん?)
そのかわり、映画では、今まで祖国の命令で仕事をしてきたモモが、初めて仲間との仕事に夢中になっていく、そんな流れがよく描かれていたと思います。幸田がモモをかわいがるようなちょっとしたシーン(幸田がモモの頭をかきまわしたり、おごるよ、と笑うシーンなど)が本当にかわいらしいです。

それから春樹がらみで言いますと、暴走族がオールカットということです。
原作では、北の流れの息子である暴走族のリーダーであるサクと、春樹の確執が描かれ、それに伴って、春樹と幸田がオートバイに乗る色っぽいシーン(そして春樹が幸田を押し倒して・・・とか^^;)があるわけですが、残念ながらそれはカットです。
サクの代わりに出てくるのが、夜の仕事をしているやくざななのかな、キングという男。女を転がしたり、賭場をやってたり手広くやってるみたいですね。このあたりは現代の夜社会の状況を反映しているのでしょう。暴走族はもうはやらないから。
で、春樹はなんとリストカッターで(!)ギャンブル依存(!)という設定。
これもすごい変わりようで正直驚きました。
春樹はなんとなく社会から逸脱していて、生きにくい18歳の少年というイメージだったのですが、それを現代におきかえて、膨らませると、こういう設定になったのかもしれないなと思いました。で、たぶん映画での春樹の設定は成人だったように思います。(原作の「鑑別所」行きという台詞が、「刑務所」行きという台詞になってたので)
ですがね〜この溝端くんが好演しておられます。
私の中では春樹がすでに溝端君に置き換わってしまいました。
出てくるシーンは少ないのですが、あの暗い目やら、ちょっと子どもっぽさが残った所やら、も〜うあれは春樹そのものでしょう。
惜しむらくは幸田とのラブシーンとか、北川といっしょに幸田の寝姿を眺めるシーンがないとことと、犯罪にかかわることで、少し生き返ったように見える部分(金髪染めとか、モモとパチンコして遊ぶシーンとか)がないことかな。
でもとっても良かった。溝端君。
キングに復讐に行ったシーンでは泣いちゃいそうになりましたよあたし。
あ、一応幸田とオートバイ乗るシーンやら、幸田に湿布をはってやるシーンはあったんですけどね〜。ふふ。
幸田と春樹の出会いのシーンなんて描かれてるから、もうこりゃあ原作の行間を埋めてくださってありがたや〜です。

で、北川がらみ。
うひょ〜ウェービーのはずの北川が角刈りだ〜(笑)というのは置いておいて、浅野さんはナイスキャスティングでしたね。
妙に自信があって、大きなことが好きで、強引で、男にも女にもモテる。そんなチームリーダーにぴったりでした。
流石に監督ご指名のキャスティングです。
あたしの中では、黄金を抱いて翔べっていう作品は、壮大な北川の幸田への片想い作品のように感じるわけですが(^^;)その北川の幸田に対する執着がも〜うこれでもかって出ててよかったなあ〜。
原作でも最も萌えるシーンのひとつで、幸田が、モモは人殺しだからもう仲間にするのはあきらめろと言ってトラックの中で北川を説得しようとするシーンがあるのですが、そこを残してくれた監督、ありがたや〜〜。
逃げようとする幸田の腕をつかみ、幸田を逃がさない北川、「お前を簡単にあきらめると思うのか」とのたまう北川。きゃ〜。実写だわ実写。
原作では幸田の心の声が「こうやって踏み越えてくるのだ」うんぬんの台詞があったと思いますが、流石にこれはなかったけどね。心の声ですから。
で、北川はジャイアンで、幸田はのび太らしいです(なんじゃそりゃ〜笑)
そして、幸田は北川のことを「北川さん」と呼んでいる。これが妙に新鮮でありました。原作では呼び捨てだからね。
一応先輩だから、こうしようっていう話になったのかな?

そして、チャンミンさんが演じたモモさんです。
いや〜衝撃のイケメン設定です。試写会でみたときは、あまりのイケメン具合にのけぞって、なかなかモモさんのところに没入できない私がいましたが、2度目は大丈夫でした。
原作でのモモは、いるのかいないのかよくわかんないようなそんな目立たない外見で、なにがそんなに悲しくてさえないのか、という容貌に描かれひっそりと生活していたはずですが、あの美青年のチャンミンさんにそれを要求するのは流石に無理!と監督も思ったんでしょう。
映画でのモモは豆腐屋でバイトすればおばちゃんに「あんた、豆腐屋にもったいない」と言われ、テレビにチョリョファンの映像が出れば「イケメンさんや」と言われ^^;
あんなぼろアパートにあんなイケメンがいたら目だってしょうがないよ、あんた!と突っ込みをいれたくなりました。
でもね、チャンミンさん頑張ってましたよ。日本語の台詞もたどたどしくも頑張ってて、そこがモモっぽくてかわいかった。男っぽい外見と、子犬ちゃんみたいなかわいさが相まって、そしてあの高身長!!
幸田を見おろしたときのあの身長差がも〜うたまらん。
幸田とモモが出会ったのは「運命だろ」ですって(by幸田さん)ひょ〜〜〜。なんじゃその台詞。
女装もちゃんとやってくれましたよ。すぐに脱いだけど。
それにしても冒頭からモモが兄さんを殺すシーンと、その前のシーンが出てきて驚きました。
そのシーンも原作には出てきませんからね。
非常にモモの立場がはじめから明確に、簡潔に描かれていて、おもしろいなあと思いました。
そこがよくわかんないままなのが、この原作ですから。
あんなふうに楽しげにしゃべって、6年ぶりに再会して、殺したのか・・・。
それにしても原作ではあれだけ出てくるパチンコ屋がまったく出てこないのは、どうしてなんだ、この映画(笑)。
一番好きだったのが、チャンミンさんが、サバずしを食べたいといったところ。も〜うほんとずっきゅんですよ。
あんなかわいい人と二人でいりゃあ、そりゃあもうデキちゃいますよね、幸田さん!
といってもそういうシーンや、台詞すら、オールカット。
あ、この映画に、そういうシーンはまったくありません。
そこは一貫してましたね。ウェットな部分は出さない方向にしたのかな。
原作が一番腐ってるってこのこと???
まあハードカバーでは確かできてる発言はなかったと思いますが。
文庫で、ですよね、北川が幸田にいつモモとできたのかを聞くのって。

あといろいろ違っているところはありまして、政治がらみの話がオールカットでした。
北やら南やら左やら右やら共産やら…そういうところ。
ということで、春樹の誘拐にからみ、幸田が白山1号に乗るっていうシーンもなし。
まあ非常にあのあたり、複雑に入り組んでいて、いったい誰が敵で、どこの国とどこに国の問題なのか、混沌としていますから、ここを描いてしまうと、観客がわけわかんなくなる、と思ったのかもしれないですね。
なにせ2時間でおさめないといけませんから。

それから、じいちゃん。
まさかの西田さんでしたが、面白いくらいキャラが違っていて、これはこれでアリかなと。
本当はやせ細った、昔はかっこよかったと思われるじいさんという設定なんですけど、でっぷりとふとってるじいちゃんでした(笑)。
それにしても幸田が、父さん、と明言して泣くシーンは衝撃でしたね。
そうか、言いきってしまうのか!とびっくりした。あのときの神父が本当に父だったのか、よくわからないまま、複雑な思いを抱えて、幸田はじいちゃんの死に際すると思っていたので。
冒頭で幸田が人間のいない土地で、「死にたい」と明言していたこともそうでしたが。(そこは暗喩の部分だと、私はずっと思っていたので)
モモさんがじいちゃんの正体に気づくのが遅くて、それもびっくり。本当は、じいちゃんの正体を知っていたモモが、幸田たちにじいちゃんちに連れていかれて、どうしたものか、と思うという流れなんですが、映画では、じいちゃんちに泊りそのあと、幸田と一緒に変電所の偵察に行ったときにじいちゃんの正体に気づく、という流れになっております。
あと、なんといっても最後のシーンですね。
亡くなった人を北川が川に流すシーン。
う〜〜〜〜〜〜〜ん。
やっぱり幸田は死んだんですか・・・・・。
生きてるんじゃないか、って私は20年思い続けてたよ。(いや、たぶん思い続ける)。

あと「玉川電機サービス」に塗りなおした車が実写で見れたり、そういう細かいところが面白かったです。

幸田を演じた妻ぶき君がどうして髭なのか、不明ですけど、ちゃんと幸田になってた。
あの暗い目は幸田でした。。。
いい役者さんですね。本当に。監督もおっしゃってましたが、幸田をやれるような俳優はなかなかいない、と(当然幸田も監督指名)。本当にそう思います。

最後に。
一番秀逸だったのは、職場の女性にもらった手袋をしていたもう半分死にかけている幸田に、北川が「こっちのほうがいいぞ」と渡す黒い革の手袋を渡すシーン。
俺は、お前の仲間だ、俺はなにがあってもお前を思っている。
そんな北川の心の声が聞こえたような気がします。
そしてその革の手袋を装着し、女性にもらった手袋をゴミ箱に捨て去った幸田は、同時にいろんなものを振り切ったのではなかろうか。。。。
あのシーンは監督の深い意図があると思う。

ぜひとも。ご覧になってください。よい作品です。

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