新潮文庫版マークスの山(下)読了。(徐々にメモ追加)ネタばれ注意

  • 2011.07.31 Sunday
  • 21:34
 さてようやく下巻を読み終わりました。いくつかこちらも変わっているようですね。しかし基本的にはほぼ講談社と同じ。
少しずつ比較していけたら。しかし先生〜どうしてアニのところだけ変えるのかしらん(笑
多分に兄はかっこよくなっていると思います。(ネタばれは次ページに書いておりますが…がんばって相違点を見つけられたら面白いかも。)

まだ細かい違いを見いだせてはないですが、本当に久しぶりに文庫マークスを読んで、は〜とため息をついた私。
昔文庫が出た当時読み終わったときは、こういう感想じゃなかったのはどうしてなんでしょうね。ひたすらスピード感がなくなったことや、いろんなシーンがカットになったことのほうが気になってしまっていました。しかし、内容の厚みは…圧倒的に文庫が勝ちだったんだなあと再認識。
多分レディの文庫や、太陽を〜、新冷血を読んでしまったからの感想なのでしょう。
レディ以降高村先生の書かれるものって、一貫して検察と警察との関係、それぞれの内部の組織の問題、それから責任能力の有無(精神鑑定)、死刑の当否等にあるような気がします。
文庫マークスを作られたときに、すでにそれは高村先生の頭に強くあったんだなあということを再認識させられました。
ハードと読み比べたんですけども(本当に久しぶりに)、起こった犯罪はほぼ一緒なんですが、それを捜査する者たちのリアリティが全然違う。
ハードは、スピード感があって、わりと次々に出来事が起こってその周りで合田たちが動いている感じなんですけれども(このスピード感は好きです!)。
文庫の方では、過去の佐野警部が携わった岩田の事件、合田と広田が携わった水沢の事件それぞれに上部からの圧力がかけられ、岩田は野村殺しについては冤罪で、水沢は当時の合田の捜査はいい加減で、捜査不十分なのに、なぜかどんどこ検察に送致され起訴されてしまう。(水沢の事件なんて、ハードではそもそも責任能力について弁護人が主張していないとあっさり書かれてある。文庫は弁護人が当初責任能力がないとして精神鑑定を主張していたが、なぜかそれが途中からなくなったという恐ろしい記述になっています。)いずれも今の国の上の方にいる人たちの過去の犯罪を隠すため、いや、たぶんもっと上の方の権力争いで働いた力なんですが…。岩田に罪をきせ、水沢は刑務所に…。が、そもそも、被害者浅野は水沢の起訴を取り下げてほしいということを弁護士会に訴え、弁護士会が検察に取り下げてほしいという書面を差し入れていたとか。(浅野たちの昔の犯罪につながる秘密を水沢は掴んでいたので明るみにでるとまずいと・・・。)もう四方八方からいろいろな力が加わっていたわけであります。水沢を出すのか閉じ込めておくのか、いろんな利害がからんでたんだろうなあ。普通なら起訴しても精神鑑定やって結果によっては無罪で釈放な案件だったかもしれない。それがもともと住居侵入(プラス小さな窃盗)くらいだったのかもしれないのに強盗で送致という結果になりしかも精神鑑定もなかった。しかも岩田と水沢は府中刑務所で接点があると知ったらもう合田はガクブルですよ。そして・・・合田は水沢が浅野の家では何も取らなかったという供述を聞いているわけですが、実際はおもちゃの赤い金庫が消えていた(その中におそらく遺書が入っていた。。。)ことを奥さんから聞いていますから、水沢が嘘をついていたこともわかっている。そしてそんな水沢が行方不明で今回のホシで、さらに犯罪を重ねようとしているとしたら…。ひょ〜〜怖い。。

そうやって合田は過去の自分の捜査がずさんだったことを恥じ、そもそも水沢は当時はたして病気だったんだろうか、いや、そうではないんだろうか、とぐるぐる考えています。どっちにしても取り返しのつかないことをしたことになると。
しかもそのよくわからない状態で周りのおぜん立てのままに送致してしまったことを悔いている。しかも過去、水沢は看護師殺人を起こしてたけれど、精神がいかれていて起訴できなかったという前歴があったわけですが、当時の前歴照会に姓が違ったとはいえなぜかひっかからなかったという事実(怖い…)。そこでひっかかっていたら多分もっと慎重にいろんなことを調べていたでしょうに。
なんにせよ合田たちはいい加減な捜査をやってちゃんと調べないうちにそのまま送検してしまった水沢が、今回の事件のホシだということが判明した瞬間、はっきりとクビを覚悟しております・・・。

この辺の流れは完全加筆だったんですね。合田は自分が捜査するにあたり、水沢が今回のホシだと確信したけれども、それを明るみに出せば、過去の自分の捜査ミスも明るみに出てしまう。そこで腹を決めるまでに随分と悩んでいる。そしてそうやって悩む自分を保身、と自己嫌悪。
岩田は岩田で昔、岩田はやってないんじゃないかと思いつつ、こちらもおぜん立てのままに送検しまったるわけだから真っ青なわけです。
(こういう問題は、高村先生がほかの作品でも繰り返し書かれておられて、すごく問題意識をもっておられるんだろうなあと思います)

そしてやっぱり文庫版の加納はかっこいい。
最初のほうのさらりさらりと合田に色々なことをリークをするシーンは変わっていませんが、下巻の方の助け船の出し方と言ったらもう「アニ〜〜!」と叫びそうになるくらいかっこいい。この辺も全くハードとは変わっていたのですね。(ハードでは合田が検察に無鉄砲に電話をかけ、加納が出る、というシーンがありましたけど。この突拍子のない感じは好きですがね〜)
それに山岳会の名簿と誰が誰なのかということを、東京駅で合田に流すのアニだったのか。加納は、野村事件に関して疑問を持ち、昔変な捜査があったかもしれないと独自に名簿を入手していた(アニすごい)・・。
合田が上で書いたように昔の事件のからみでクビになるかもしれんというタイミングで、警察に、匿名で例の検察あての申し入れ(過去の水沢の強盗送致の件のときに検察あてに弁護士会から送られた、水沢の起訴をやめろというやつ)をらにファックスしてくるのはなんと加納さん(とはかかれませんが、合田はそう確信)(涙)。兄としてはともかく合田の過去の捜査はずさんだったかもしれないが、もっと大きな色々な方面の力が働いていたということを知らせてくれたんでしょうね。。
そしてもう自分のミスやら目に見えない黒い力にブルブルしている合田は、加納はなんて恐ろしい権力闘争うずまく世界で生きてるんだろうと震撼するわけです。私は公衆電話から、アニにいろいろ助けてもらった礼やら自分の現在の不安を留守電に吹き込むシーンがすごく好きです。
そして甲府に行く前にやってきてくれた加納さんとの赤羽台団地でのシーンも。
大きな力で色々な事項が隠ぺいされ、いいように動かされている組織の中にいて、なんとかかんとか自分の譲れないものを必死に守ろうとし、真実を求めつつ、ふたりとも生きている。そのあたりの描写がすごくじーんときましたね。結局加納さんも「MARKS」のうち佐伯はマークしていながら死なせてしまったわけですし…。さぞつらかっただろうなあ。加納さんは京都時代からこの野村がらみの事件のことは知っていたらしいですし。
出発前の合田の登山靴を磨いてあげている加納さん、いったいなにを考えていたんだろう。そしてその背中を眺める合田さんは。。。そしてそのままレディ文庫につながると、あらら、すごくしっくりくる!。(レディ文庫では、二人ともあまりにもう暗い組織やら力やら、それによる犠牲者の多さやらに、もう互いにどうにかなりそうになってしまうわけです・・・。)

そういえば文庫照柿では、達雄が殺人を犯し、合田の立場がいよいよ本当にやばくて警察から聴取を受ける前に、検察官になって初めて、警察にいる合田に直接電話をかけてきてくれたっけね。
そしてレディで勝手に合田に自爆されたら、ああ、加納……そりゃ泣くよねそりゃあ。



以下ネタばれ
・講61「吾妻はしかし、通路に出るやいなや」→新66「吾妻はしかし、通路に出たときには」
・61「今」→67「いま」(今は「いま」でこの後も統一のようです。)
・103「一連の窃盗の一つだった可能性は依然として高いのだ」→113「一連の窃盗の一つだった可能性は高いのだ」
・104「異性への生理的欲求はなし」→115「異性への生理的欲求は不明」
・120「いっぺん紹介してやるわ。名前は加納だ。のんびり屋でまっすぐなええ男やぞ」→・134「いっぺん紹介してやるわ。そこらの特捜検事とは違う、精密司法が服を着て歩いているような男やぞ」
(おお、やっぱり加納さんかっこよくなっている。のんびりなええ男もいいですけどねん♪)
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