太陽を曳く馬 読書 その2 (ネタばれ)昔サイトに置いておいたものを緊急避難

  • 2010.03.01 Monday
  • 00:49

 昔読みながら書いていたメモです。サイトに昔アップしていたのですが、とりあえず改装中なので最初の方だけこっちに置いておきます。ネタばれなので。
サイトを綺麗にできたらこのメモの続きもやりたいですが。いつ終わることやら

太陽を曳く馬 第2章ダダ 新潮2006年11月号350〜365頁

★第2章感想★
合田警部の捜査中の姿が久しぶりに見られて嬉しい!と思いきや,いきなりカエル…カエルって…。相変わらず忙しそうだけどどこか陰鬱な合田雄一郎42歳。お偉方の名前が結構でてくるのはやっぱり合田が中間管理職になったという証拠ですな。書類に埋もれる生活みたいですな。どこか暴発しそうになりながらも思考停止をしてなんとか切り抜けている大人な雄一郎。いつか爆発しないか,結構危ういですな。
部下の吉岡巡査部長は31歳。マークスのときの合田とはえらい違いです。光ディスクのような頭脳を持っているこの吉岡を合田はどこか不思議そうに見てるけど,それでも使えるやつだとは思っているようです。吉岡に気負いなく話し掛けられて当惑している合田がなんとなく可愛らしい。
 
で98年の秋道事件についての回想に入るわけですが。
なんといってもオッたまげた吉田戦車!!ゆうびーん。とか斉藤さんとか,そういう言葉が高村薫の本に出てくるなんて。そして吉田戦車とツァラの取り合わせが理解できない合田の当惑っぷりがおかしくておかしくて。冷や汗まで流していますぜ。しかもその後加納と会ったときにしっかり話して聞かせているし。相当衝撃だったのだな。
加納については少しずつ記述が増えてきましたが,いまいち任官時期が分からないんですよね。98年秋に合田と話をしたときは,まだ検事だったようだし。それから半年くらいで裁判官に任官しているみたいですが,検事を辞めたのは98年内のようで,少しブランクが発生します。その間,加納は何をしていたんだろう?とか。おいおい出てくるのかしら。

加納が合田から吉田戦車の話を聞いたときの切り替えしっぷりが,今までになく凄みがあって,私冷や汗でした。ノーパンしゃぶしゃぶとかの取り調べをやってたらしい加納,相当検察に嫌気がさしてたみたいですな。LJのときも嫌がってたけど,そのときは合田は無理矢理接待ゴルフに行かせたんだっけ。しかし,この加納のセリフを聞いたとき,合田はどう思ったんだろう。本当の世界を見せてやろうか―。なんだか恐いです,加納祐介。昔は加納のセリフってもっと高尚だった気がするんですが。こんなセリフを言わしめた検察の世界って一体…。しかし裁判官になったとしてもそう世界は変わらないしなあ。どろどろとした捜査から一歩距離を置いて,学術的に考えられるという点では加納に向いているのかしらん。相当精神的に参っちゃったのかなあ。

今まではどちらかというとこの世界に絶望し,自分にも絶望していたのは合田のほうだったような気がするんですが,太陽を曳く馬では加納のほうが厭世的。合田にも黙ったまま裁判官になってしまう加納祐介。さぞ合田には晴天の霹靂だったに違いない。
 加納が検察の情報をまわりくどくリーク→合田がネタを追う→合田自暴自棄→加納助け船…的な構図が崩れてしまったわけです。なんだかんだいっても検察に加納がいることは合田にとっては心強いものがあったと思うし。今後はこういうつながりもなくなってしまうと。
暴走しまくりだった合田もようやく少し落ち着いたことだし,18年間忍耐してようやく心も通い合った(のか?)し,俺は40前にそろそろこころ穏やかになりてえよ…。てな具合の加納だったのかしら。
おや?ちょっと余裕?
合田はしょんぼりしてそうだけど。
だけど,義兄…一歩踏み出したのはいいけど,9.11…。
ここまで絆が切れてしまって,大丈夫??義兄……。
なんとか繋がっていてほしい。
それにしても弁護士にならずに,裁判官を選ぶあたり加納だよな。私としては裁判官10年くらいやったら大学教授とかになってほしいけどな。

さて合田はすでに警部ということで,調書調書の生活。それにしても相当ペーパーの世界には嫌気がさしているようです。やっぱり実際に足を動かして本人に会ってというのが合田の性に合っているようです。
管理官やら一課長やら昔は権力者として描かれていた人物達と合田が会議をする立場になって,意見を求められているのは不思議な感じ。それでも官僚やお偉方の考え方にはどうしてもついていけないと思っている中間管理職,合田雄一郎警部。

 

 


以下ネタバレ読書メモ
●350頁:2001年,11/12夜,小岩井署特捜本部会議室にて仕事中。専門学校生とその友人の無職の青年に対する殺人と死体遺棄事件について。
合田夕刻小岩署→南小岩のアパートと公園を検証→再び小岩署で会議室に入って4時間。

・雄一郎はカエルのように息をする…カエル,カエルですか。カエル………。
・手は受話器とボールペンと書類でふさがっており…書類にまみれる合田警部。
・雄一郎は「窓を開けろ」…煙草の煙が未だ我慢できない合田。そういえば合田は煙草吸わないよな。結構奇跡的。
●351頁:署長と刑事課長がやってくる。
・肺の中のフットボールが窓ガラスを砕く…トリスタン・ツァラ Tristan Tzara (1986-1963)の詩。ダダイズムの創始者。
・ダダイズム:1920年代にヨーロッパやアメリカで吹き荒れた現代美術運動
・検事が明後日の送致の予定を聞いてきていた―とにかく送致は11月14日夕方ということで。…今日はどうやら11月12日。
・若者4人が自首―緊急逮捕。
・南小岩の女友達のアパートで脅し,暴行の末死亡させ,平井運動公園の護岸から遺棄・「容疑は殺人だ,傷害致死にするな」という一課長の指示を繰り返し,頭を停止させる…考えるのを放棄してなんとか自分を保っている合田雄一郎・・・。
●352頁:合田調書作成など。
・「おかげさまで順調です」こちらも明るい声をつくり…悠長な本庁からの電話に一瞬むかつきながら,明るい声を作る合田雄一郎。ああ中間管理職。
・空間の次元は柔軟で愛は四メートルだ…ダダの詩より
・吉岡という巡査部長の,一息ついたという声が―(略)だからどうだという意図も何もなく,上司相手に軽やかに言葉を繰り出せる世代。…吉岡は巡査部長。
・「君,たしか七〇年生まれだったな」…吉岡は2001年31歳。合田のマークス登場時とはえらい違いだなあ(笑)。あのころの合田ってやっぱり切れ者だったのか。森に至っては……暗くてよくできる男だったな。そして吉岡に「君」と呼びかける合田。
・そうだ,欲しいのはこのべたりとした光ディスクのような頭脳だ…合田の目には吉岡がこう見えるらしい。光ディスクのような頭脳。なるほど。それでも馬鹿にはしてない合田。
・液体と固体の間のような生き物。そういえば,解剖台の水死体の…若い女を見た合田の感想。水死体っておい。
・吉岡は私物の携帯電話で私用のメールだ。…公用じゃなくて普通に携帯をいじっている吉岡。
●353頁:秋道事件回想1998,6/3。弱い雨,昼間,肌寒い。
・福澤秋道を吉祥寺東町一丁目十六番で発見。同居人の女性大野恵美二十五歳と嬰児の死体,川嶋大輝19歳の死体発見。合田は現場には午後一時半に到着し(新宿署→吉祥寺)―部下と玄関の死体を検分。
・雄一郎は当時,第四強行班捜査九係におり…98年当時の合田の職場。
●354頁:合田現場捜査中。
・バーミリオンという色だった―…銀朱。朱肉みたいな色。
・そこには新石器時代の岩絵らしい何かの生きものの姿があり,赤い顔料で着色された太鼓の荒々しい線が,これも突然,眼の中で音を立てて…太陽を曳く馬?キィワード。
●355頁:合田,吉田戦車とツァラの詩集を見つける。
・コミックの一冊を拾うなり「吉田戦車か」(略)―ゆうびーん。―レコード買ってくださいな―いまならおナスもついて…あははは。「伝染るんです」ですか?!どひゃあ。
・『トリスタン=ツァラの仕事/詩編」…『トリスタン・ツァラの仕事供住輅咫拌臺振馼Аδ邑胸北思潮社???これか??
・心臓に冷や汗が滲んでくるような感じがし―あるいは意味という意味が崩壊した世界の静けさ―…吉田戦車とツァラを目の前にした合田の感想。茫然自失ですな。
●合田,その年の秋に加納祐介に会って秋道事件の話をしたことを回想。
・祐介は言ったのだった。吉田戦車?ダダ?―(略)廃品でできた夢の島の凄みを俺は感じるが,それはまだ見入ることのできる無意味という意味が,そこにはあるからだ。それに比べて,パンツをはいていない女性の股を覗きながら,しゃぶしゃぶを食って―(略)そんなことを俺は少し前まで毎日,壊れた穴のような顔に向かって尋ねていたのだ。なんなら,ほんとうに壊れている世界というのを見せてやろうか――…祐介に合田が話をしたときの加納の感想。というか凄んでいる義兄。相当検察が嫌だったのね。
・そのころ祐介は,前年から相次いだ中央省庁の低劣な不祥事の捜査…ノーパンしゃぶしゃぶ。
・近々検察を辞めるつもりでいることを隠したまま…加納は合田に相談していなかった。
・いや,君の眼にはまだこの廃品回収場のような世界に立ち会う強度があるということなのだろう。俺にはもうそんなものはない。…投げやりな加納。本当に嫌だったか。検事がそんなに……。
・やがて公報の地裁判事任官の欄に元義兄の名前を見つけて仰天することになる,ほんの半年前の話だ…98年の秋に合田は加納と会い上記会話,そのときはまだ「近々辞める」ことを秘していた。加納の任官はこの会話をした98年秋から半年くらい後。異動時期としては99年春が妥当?2001年9/11のとき「3年前に突然地検を辞め」という記述があるから98年の秋のこの会話以降に地検を辞めて任官まで少しだけ空白期間があることになるが???←この辺要検証。
●356頁:1998年6月3日。
合田吉祥寺→機捜ともに聞き込み捜査→午後3時,武蔵野署で,緊急逮捕された秋道の供述調書に眼をとおす。
●357頁:秋道の供述調書読解中。
●359頁:秋道の弁解録取書読んだあと,本人の取り調べに入る。
●360頁:合田,秋道取調中。
・雄一郎は何かが<違う>という直感の声を―…久しぶりに登場,合田の刑事のカン。
●361頁:合田,聴取をベテランに任せ,逮捕状請求書を書く。川島大輝の遺族の参考人供述調書を読む。
・捜査書類の活字に置き換えられた言葉は常に事実でなく―(略)捜査責任者としてそれに眼を通すのは,いったい世界を再構築しているのか,夢の島を掘り返しているのか…管理職の仕事に疑問を感じつつあるのかな?
●362頁:一課長からの電話。理事官からの電話。所長室へ→大野恵美の父と会う→管理官と会う。
・皇居の周りに集結した権力と権威の空気が電話線を通して…一課長の電話の感想。
・屋内型レタス栽培工場の照明灯のような官僚の声…理事官の電話の感想。
●363頁:管理官,合田に秋道の供述について問う。合田,大野恵美に関する参考人調書を読む。
●364頁:秋道の少年簿を読む。午後6時,特捜本部が立ち,合田,最後に捜査方針を読み上げる。
●365頁:課長,管理官とともに嬰児の取り扱いにつ協議,午後9時半すぎ,荒井久美子から電話。

さて,秋道を検察官送致できるのか?

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